インタビュー/国土交通省 物流・自動車局様
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”書類の壁”から脱却。「相談まで2日待ち」を解消した物流・自動車局のオフィス改革

国土交通省 物流・自動車局 総務課長 谷口 礼史 氏(右)
国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課 櫻庭 大慈 氏(左)

 

国土交通省におけるオフィス改革の動きの中で、先陣を切って行った物流・自動車局様。プロジェクト完了から1年。30年間そのままだったカーペットや、視界を遮る「書類の壁」を一掃したことで、職場には大きな変化が生まれています。

改革を主導した櫻場氏と総務課長の谷口氏に、執務室内の「雛壇」削減や書類半減に向けた地道な調整の裏側や、プロジェクトを経たことによる働き方や意識の変化について伺いました。



【背景・課題】
  • 「選ばれない役所」への危機感
  •  30年蓄積した「負のレガシー」
  •  コミュニケーションの阻害

【生み出したい変化】
  • ”仕事も生活も快適に”
  •  窓際とスペースの開放
  •  トップダウンとボトムアップの融合

#働き方改革  #人材獲得  #雛壇削減  #窓際開放  #書類半減  #ペーパーレス  #コミュニケーション活性化  #意思決定の迅速化


▶ Point:国土交通省オフィス改革プロジェクトの経緯と全体像

国土交通省様が入居する中央合同庁舎第3号館は、建築から58年が経過し施設全体の老朽化が進行。オフィス環境の満足度*は約2割にとどまり、会議・打合せスペースは慢性的に不足。一部では書類が山積するなど、業務環境のデジタル化も懸念がありました。業務効率・人材確保の観点からも、オフィス環境の抜本的な見直しが求められましたが、規模が大きいため、全体最適の視点に立った段階的な改革が不可欠に。そこで、オフィス改革を着実に実行・推進する計画を文祥堂の協力により策定。初年度実施部局として、物流・自動車局様が先陣を切ることとなりました。

*_令和5年度実施の職員アンケートにおける"満足"の回答率



 「このままでは選ばれない」 ―― オフィス改革で先陣を切った理由















――今回の改革は省内で真っ先に手を挙げられたそうですね。オフィス改革の背景を教えてください。

  

谷口:

私たちの局は、トラックやバス、タクシーなどの事業を所管しており、国民の日常生活に直結するサービスを扱っています。そのため、地震や台風といった自然災害時の交通確保や支援物資の輸送など、突発的かつ機動的な対応が求められる職場なんです。また、国会対応も非常に多く、スピード感が欠かせません。しかし、以前のオフィスは書類が山積みで、コミュニケーションを取るための場所さえ不足していました。

 

櫻庭:

現場からも「とにかく床が汚い、埃っぽい」と切実な声がありました。実はカーペットが30年も張り替えられておらず、ブラインドもあちこち折れ曲がって埃をかぶっているような状態で。また、課の間に書類が山積みになっていて、向こう側が見えない、風通しが悪いというのが目立った課題でしたね。

 

谷口:

それに加えて、深刻なのは人材獲得競争です。民間企業が非常に魅力的なオフィスを整える中、役所が「旧態依然とした場所」のままだと、優秀な学生に見放されてしまう。国交省全体としてオフィス改革の流れがある中で、「仕事も生活も快適に」という旗印を掲げ、局長自らが総務課へ熱いプレゼンを行ったことで、オフィス改革の先陣を切ることになりました

 

  

――プロジェクトはどのように動き出したのでしょうか。

 

櫻庭:

7月頃にプロジェクトチーム「SSKPT」が立ち上がり、まずは全局から課題を集めるための大規模なアンケートからスタートしました。当初は技術系の部署が持っていた過去の計画を参考にしつつ、手探りで進めていきました。

 


 書類の「壁」を壊す ―― 外注1億円分の作業を自分たちの手で乗り越える


――オフィス改革で最も高いハードルが「書類の削減」だと思います。どのように進めたのでしょうか?

 

櫻庭:

以前は課と課の間に本棚があり、その上に何年分かも分からない書類が積み上がり「壁」になっていました。窓際にも書類が積まれてましたし、全体では絶望的な気持ちになるほどの量でした。当初、この整理を外注しようと見積もりを取ったら「1億円かかる」と言われてしまって……(笑)。結局、自分たちでやるしかないなと。

 

【Before】 課と課の間に積みあがった書類の壁

谷口:

物理的なストレージ(引き出しや棚)を減らして、書類はできるだけ廃棄か倉庫に移すなどしていました。執務室内には使用する可能性が高い書類中心に置くような考え方ですね。

 

櫻庭:

もちろん紙の方が良いとか、この書棚はどっちの課が使うかみたいなことはありましたが、課と課で交渉したり、仲裁に入ったり、局長の意向というトップダウンで進めたりと、何とか調整を付けていく作業をしていました。

 

【After】 積まれていた書類の壁が無くなり、奥まで見通せるように
 

――書類の削減によってどんな変化がありましたか?

 

櫻庭:

量としてはおおよそ半減くらいでして、庶務を通じて各課で削減をしてもらってもいたので、想定よりも成果がでたなっていうところはあります。

 

谷口:

以前は机上に書類を積んでいる人がいましたが、今は直近で使う書類を置いていて、必要性がなくなったら電子で保存してシュレッダーしてという風になりましたね。基本原本が電子的に残っていれば紙で残す必要は無いという考え方に、みんながなりつつあると。

 

櫻庭:

窓際も物理的に書類が置けなくなったので、部屋が明るくなりましたね。

 

窓際に書類が無くなり、部屋が明るくなった
 

――1年たった後も維持できていますか?

 

櫻庭:

特に「頑張って紙を無くしましょう」ということはしていないのですが、意識と代替手段を用意するっていう両輪でペーパーレス化が進んできている感じですね。当時のキャンペーンが意識的に根付いているのと、最近は打合せスペース全てにディスプレイを配備したことで、余計な打ち出しをせずパソコンを持ち寄るようになりました。

 

谷口:

情報端末やシステムなども更新されてペーパーレス化しやすいIT環境にもなりつつあります。個人でファイルにしてストックするのが主流だったところから、共有フォルダやクラウドを活用して電子的に共有する形になったことで、情報がより共有化されて、担当が休んでいてもすぐ情報が取れるようになりましたね。

 


 窓際の「雛壇」削減で得られたもの ―― 情報の風通しとタイムリーなコミュニケーション


――窓際に並ぶ「雛壇(ひなだん)」の削減も、霞が関ではハードルが高い取り組みですよね。

 

櫻庭:

はい。外の景色が見える窓際を管理職や書類が占有するのではなく、共有の会議スペースにするために、一部の雛壇を廃止して、課長補佐級の管理職も部下と同じ島に座るレイアウトにしました。これはやはり抵抗もありましたね。

 

谷口:

雛壇に座ることは「出世の象徴」とイメージされる方もいますから、「ポジションが下がった」気分になる方もいたかもしれません。

 

櫻庭:

対象となる方一人ひとりへ伺って、「このレイアウトにしないと、皆が使うスペースが確保できないんです」と丁寧に説明して回りました。 地道な作業でしたが、最終的には局長の後押しや総務課長の裁定といったトップダウンの力も借りて、なんとか実現にこぎつけました。

 

管理職(一部)が雛壇から島に入ったことで、気軽に相談しやすくなった
 

――雛壇が減ってどのような変化がありましたか?

 

櫻庭:

実際に同じ島に座ってみると、気軽にヒョイっと行って話ができるので、以前よりも相談がしやすいですね。情報の風通しも実際に良くなったのかなと思います。また、書棚とレイアウトの整理でスペースが生まれたので、共有の打合せスペースやフォンブースを設置できました。

 

込み入った相談もしやすいフォンブース

 プロジェクトの正念場 ―― 繁忙期の「3月着工」と合意形成


――プロジェクトの後半戦、特にレイアウト確定までの工程で苦労された点は?

 

櫻庭:

夏にワークショップを行い、年末の完成を目指していたのですが、レイアウトの調整が本当に難航しました。広く意見を聞いた分、あちこち調整が必要で「一度決まったものが直前でひっくり返る」ことが何度もありました。結局、完成は年度末の3月。一番忙しい時期の引っ越しになってしまいましたが、粘り強く対応いただき、なんとか着地できました。

 

谷口:

アンケートの自由記述で出された意見に対し、事務局として、少しでも応えられるものには応えるようにしています。Microsoft Formsで匿名で意見が言える「目安箱」も作り、「隣の課と内線電話の着信音が同じで混乱する」など、出てきた不満にはその都度軌道修正して対応しました。「自分たちの意見が通った」という実感が、改革への協力的な姿勢に繋がったのだと思います。

 

 
 

 オフィス改革から1年 ―― 具体的な変化とこれから


――改革から約1年が経過しました。実務面での具体的なメリットはどう感じていますか?

 

谷口:

 意思決定のスピードが上がりました。 以前は打ち合わせスペースが空いておらず、「相談したいけど場所がないから2日後で」といった無駄が発生していましたが、今はタイムリーにミーティングや面談をやれるようになりました。職場の風通しを良くしていく上で、職員と上司の本音の相談って大事ですので、それをパッとやる場所があるのは非常にいいと思いますね。

 

パッと集まってタイムリーに打ち合わせを行えるスペース

櫻庭:

心理的な変化もありました。私の課は、以前別だったグループが混在している影響で、デスクの向きもバラバラだったんです。それを今回、同じ向きに統一し、同じ島に配置したことで、一体感が出ました。「同じ組織なんだ」という意識を持ちやすくなったのは大きな変化ですね。

 

谷口:

若手の負担軽減にもつながっています。以前は空いている会議室を庁内サイトで探し回るのが若手の仕事のようになっていましたが、今は自席からパッと予約状況を確認して、サッと集まれるようになりましたから。

 

櫻庭:

ランチタイムには打ち合わせスペースを交流の場として開放しているのですが、みんなで集まって食事をするなど、コミュニケーションの質も変わってきています。

 

打合せスペースで食事できるようになり、ランチタイムの交流が生まれている

――今後の展望や、さらにチャレンジしたいことを教えてください。

 

谷口:

今回の改革である程度「物理的な環境」は整いましたが、次は「ソフト面での生産性」をさらに高めたいですね。私たちはヒアリング業務が多いので、AIで議事録を自動作成するなどして、若手の労働時間を短縮していきたいと考えています。

 

櫻庭:

まだ書類が溜まりやすい部分もあるので、サーバーの増強を含めたオンライン化を加速させたいです。「誰かが休んでも、共有フォルダーを見ればすぐに仕事を引き継げる」という体制をハード・ソフトの両面で進めて行けたらと考えています。

 

谷口:

オフィス以外にもアンケートも取り続けており、改善を続けています。予算の制約で手が回らなかったフロアの改善や、ロッカーの2段化による更なるスペース捻出なども行って、より良いオフィスを作っていきたいですね。まずは仕事の効率が上がり、生活が快適になることを優先的に進めたうえで、その先更にどんなことができるかを考えていきたいなと思っています。

 

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