Workplaces

環境省 地球環境局 様

 仕事の効率性と生産性をあげるためのオフィス改革

左から/田中 俊秀 様、五反田 豊 様


  現在、地球規模で課題となっているのが、温暖化の防止やオゾン層の保護などの気候変動問題です。このような課題に対し、政府全体の政策について、企画、立案、推進を行っている組織が、環境省 地球環境局様です。

 2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
 カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全及び強化をする必要があります。つまり、脱炭素社会の実現です。
 この宣言によって、国や自治体、国民一人ひとりが一丸となって取り組むべき大きな目標が生まれると同時に、例えば、国会でもこれまで以上に気候変動問題が取り上げられるようになるなど、地球環境局の対応する業務が増加。これを限られた人員でこなしていかなければならないのが現状です。

 そこで急務となったのは、より効率的な働き方に変えて、生産性を向上させることでした。
 それを実現すべく行われた働き方改革の一つが、今回のオフィスのリニューアルになります。テレワークやウェブ会議などコロナ禍によって変わりつつある働き方に対応するだけでなく、地球環境局らしく脱炭素社会の実現にも対応したオフィス作りを目指しました。
 その詳細を環境省大臣官房 秘書課(前地球環境局総務課)の田中俊秀様と同省地球環境局総務課の五反田豊様に伺いました。

フリーアドレスで働きやすくするためのインフラ整備

コロナ禍に対応するためのフリーアドレス実現に際しては、Wi-fi環境をはじめとするICTインフラの整備が必須だった

幹部室、管理職専用席を新価値スペースに

会議室や集中ブースなどの新価値スペースを生み出すために、幹部室や一部管理職専用席を廃止し、柔軟な運用を開始。

2か年でキャビネットを56%削減

外部倉庫等を活用し、徹底的な文書見直しによりキャビネットを削減、背の高い什器をなくし、広々と快適なオフィスに。

オフィスを通しての脱炭素化社会実現への取り組み

脱炭素化に向けた取り組みは、同時にウェルビーイングの向上にも寄与

フリーアドレスで働きやすくするためのインフラ整備

リニューアル後の執務エリア


 コロナ禍によるテレワークの本格導入により空席が生まれ、本来であれば離れて座ることで接触回避が実現できるはずでしたが、固定席では、他人の席に座ることがはばかられ、柔軟に対応することが難しい状態でした。また、勤務時間の異なる職員がいる場合も固定席が足かせになり、定時以降は人が密集しているエリアとそうでないエリアが生まれがちでした。それらの問題を解決したのがフリーアドレス化の導入です。これによって出勤している職員が適度に間隔を空けてバランスよく座ることができるようになりました。

 フリーアドレス化を後押ししたのが、Wi-Fi環境の完備です。通信ケーブルに縛られない、また内線電話をスマートフォンアプリ化することでより自由な場所での執務とペーパーレスな働き方が可能になりました。




リニューアル前の執務デスク

固定席&袖机を使用しての執務風景

 全フロアリニューアル後の様子。白いデスクにより明るい印象に

幹部室、管理職専用席を新価値スペースに

部屋奥には会議室を増設。ガラス壁面によって執務室内にも外光が届けられる

 会議室などの新価値スペースを生み出すために幹部室の縮小、一部の管理職専用席を廃止。管理職の座る位置に柔軟性を持たせ、各課室の運用に任せました。その結果、管理職が室の職員の中心に座ることで以前よりも声をかけやすくなったり、職員を見渡しやすい場所に座るなど、フリーアドレスをそれぞれに合ったマネージメントをするツールのひとつとして、柔軟に活用しています。




リニューアル前の管理職席
管理職の座る位置は課や業務により柔軟に運用
ハイテーブル
短時間のディスカッションなどに

上下昇降デスク
長時間の作業でも体勢を変えられると好評
ブース席
クローズ型、セミクローズ型を設置、
WEBミーティングや集中したいソロワークに活用

2か年でキャビネットを56%削減



 書類の整理が追いつかず、通路を塞いでいるといった状態もありましたが、2か年かけて室内のキャビネットを56%削減することに成功しました。時点が古くなったパンフレットや必要以上に部数のある書類を整理するなど文書削減に取り組むとともに、公文書は外部倉庫を活用することで、オフィス内のキャビネットの数を減らしました。
Before
背の高いキャビネットが並んで設置されていた
パーソナルロッカー


 フリーアドレス化によって袖机がなくなり、個人の荷物は同等の収納力を有するパーソナルロッカーに移すことになりました。その際、個人で保管する書類の多い管理職の場合は、パーソナルロッカーを2つにするなど柔軟に対応することで、無理をしすぎない取り組みとしました。


廊下とデスクの間仕切りとしても機能

脱炭素化社会実現への取り組み

 ミーティングコーナー
テーブルの配置を変えてフレキシブルに活用

 オフィスを通して脱炭素化社会の実現への取り組みも進めました。環境省全体ですでにLED照明を導入していましたが、オフィスのリニューアルにあたっては、CO2の排出量を減らすべく、複合機、プリンターの削減、CO2固定効果のある国産木材の導入、さらには壁やテーブルの天板を白色にしてレフ効果を生み出したり、会議室の壁をガラス張りにすることで外光を執務室に取り入れるなど、細部にわたってさまざまな工夫を試みました。これは同時に職員のウェルビーイングの向上にも役立っており、発色の強い色味を使わずにナチュラルカラーでまとめたことで、自宅のリビングのようにホッと安らげる空間に仕上げました。
受付カウンター
国産木材の家具

オフィスのリニューアルは、働き方改革への通過点


 今回のオフィス改革は、あくまで働き方改革の取り組みの一つと考えています。限られた人員だからこそ、一人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮しなければ、脱炭素社会の実現という目標を実現することはできません。そのためには組織としての柔軟性をあげていく、つまりは一人ひとりが適材適所で働ける組織である必要があり、このオフィスリニューアルはその実現に向けた通過点でもあるのです。



概 要


人数規模:約200名(約865㎡)

竣工時期:2022年2月

ビル情報:東京都千代田区霞が関1-2-2  中央合同庁舎第5号館 3F


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