
“占有”のコンパクト化が「共有の場」を生む。実務テンポを加速させた都市局のオフィス改革
国土交通省 都市局 総務課 総務人事係長 斉木 和彦 氏(左)
国土交通省 都市局 総務課 調査係長 平田 雅人 氏(右)
国土交通省が推進する計画的なオフィス改革。 物流・自動車局と同時に先陣を切り、改革に取り組んだのが都市局です。
「人ひとり通るのが精一杯」だった狭い通路や、視界を遮っていた大量の書類が一掃され、各係の枠を越えたスペース活用が、組織の一体感と意思決定スピードに変化を生みだしています。 当時の様子とその後の変化を総務課の斉木氏と平田氏に伺いました。
【背景・課題】
- 極端なスペース不足
- 書類の積み上げによる自席の「個室化」
- 打ち合わせスペース不足による業務の後ろ倒し
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【生み出したい変化】
- ゆとりのあるスペースの創出
- 心理的ハードルを低減し、課の垣根を越えるつながり
- 「短く・早く・その場で決める」実務テンポ
#働き方改革 #雛壇削減 #占有から共有へ #書類削減 #スペース創出 #意思決定の迅速化 #オフィス緑化
▶ Point:国土交通省オフィス改革プロジェクトの経緯と全体像
国土交通省様が入居する中央合同庁舎第3号館は、建築から58年が経過し施設全体の老朽化が進行。オフィス環境の満足度*は約2割にとどまり、会議・打合せスペースは慢性的に不足。一部では書類が山積するなど、業務環境のデジタル化も懸念がありました。業務効率・人材確保の観点からも、オフィス環境の抜本的な見直しが求められましたが、規模が大きいため、全体最適の視点に立った段階的な改革が不可欠に。そこで、オフィス改革を着実に実行・推進する計画を文祥堂の協力により策定。初年度実施部局として、物流・自動車局様に続き、都市局でもオフィス改革が実施されました。
*_令和5年度実施の職員アンケートにおける"満足"の回答率
「後ろを通れないほど狭かった」―― 改革前の切実な課題
――リニューアル前の課題について教えてください。
斉木:
都市局では、都市計画や防災・まちづくりなど都市政策全般を所掌し、制度設計から事業支援まで幅広い業務を担っています。また、自治体や民間事業者との調整も多く、複数の案件が並行して進むため、スピード感と正確性の両立が求められる職場です。
リニューアル前は、長年蓄積された大量の紙資料や肥大化した個人棚が執務スペースを圧迫し、通路まで書類が溢れ出していました。

――実務にはどのような影響が出ていたのでしょうか。
斉木:
一部の課では、一人が座っていると後ろを誰も通れないほど通路が狭く、来客があっても遠回りをしなければ移動できないような密集状態になっていました。また、課や係の間に置かれた背の高い書棚が物理的な「壁」となっていたり、机上にも書類が積まれて隣の人の顔も見えないほどになっていたりしました。
平田:
同じラインで仕事をしていても、パッと相談することが物理的に難しい状況でした。書類の壁によって各課が閉鎖的になり、フロア全体の一体感や風通しが悪くなっていたと感じています。

スペースを生み出す「引き算」の工夫 ―― 脇机・袖机の撤去と文書整理
――極端に不足していたスペースを、どのようにして生み出したのでしょうか。
斉木:
まず、長年当たり前のように使われてきた脇机や袖机を思い切って撤去し、一人ひとりの占有スペースをコンパクト化する取り組みを行いました。さらに文書整理を徹底とレイアウトの調整を行い、課内に分散していた書棚を一箇所に集約しスペースを効率化することで、新たな空間を創出しました。


――長年使い慣れた什器をなくすことに、職員からの反発はありませんでしたか?
平田:
「作業スペースが狭くなる」「手元に必要な物が置けなくなる」といった懸念の声は当然ありました。そのため、「個人のスペースを削る代わりに、局全体で柔軟に使える打ち合わせスペースを増やす」という目的を丁寧に説明し、理解を求めました。
斉木:
結果としてフロア全体の見通しが劇的に良くなり、色味を統一した新しい什器によって清潔感が生まれました。職場全体が明るくなったことは、日々のモチベーションにも良い影響を与えています。

「ひな壇席」解消で変わった空気感 ―― 若手が「構えずに」相談できる環境へ
―― 一部の「ひな壇席」が解消されたことによる変化を教えてください。
斉木:
スペース創出を目的としたレイアウト調整の一環で、窓際に並んでいた企画専門官や課長補佐の席を、係長や係員と同じ「島」に再配置しました。これにより物理的な距離だけでなく心理的な距離も縮まり、以前よりも気軽に声をかけられるようになりました。
――コミュニケーションの質には、どのような変化が見られますか?
斉木:
以前はひな壇へ行く際、少し「構えて」相談に行く雰囲気がありましたが、今は隣に上司がいるため、ちょっとした安心感の中で雑談や軽微な確認がその場で完結します。特に若手職員ほど「相談しやすくなった」と、この心理的ハードルの低下を実感しているようです。
平田:
今ではPCモニターをサッと見せながら相談する光景が日常的になり、「一つのチーム」として業務に向き合っている感覚が強まっています。

「課の所有」から「局で共有」へ ―― 打ち合わせスペースの開放とスピード感
――打ち合わせスペースの運用面では、どのような変革があったのでしょうか。
平田:
以前は打ち合わせスペースを各課で管理しており、他部署が使うには各課の総務係に連絡するなど個別に調整が必要でした。打合せスペースが慢性的に不足していることも相まって「場所がないから一旦後にしよう」といったタイムロスが常態化し、業務が積みあがっていくということが起きていました。
斉木:
リニューアル後は、全ての垣根を無くして打合せスペースを局で共有とし、誰でもOutlookから予約できる運用に変えたことにより、個室の会議室も含めて予約が取りやすくなり、当日でも使用しやすくなりました。


――実務のスピード感に与えた影響はいかがですか?
斉木:
「5分、10分だけ話したい」という時でも、自席からパッと予約して場所を確保できるようになりました。関係者ですぐに集まって要点をすり合わせる「短く・早く・その場で決める」流れが生まれ、実務のテンポが整いやすくなりました。
平田:
打合せスペースを入り口付近に集約したことで、外部の方が執務室の奥まで入ることがなくなり、セキュリティ面も向上しています。

都市局らしさとこれから ――「緑化」と継続的な運用改善
――書棚の上が綺麗保たれて、植栽も置かれていましたね?
斉木:
レイアウト変更当初に、書棚の上に物を置かないと周知徹底されていたのが、今も守られていますね。
平田:
一部置かれている植栽は、2027年の「国際園芸博覧会」の開催に向けて、局全体に広げていこうと緑化を推進しているところです。
斉木:
当局には造園職の職員もいるため、「置くなら造花ではなく生花(本物の植物)を」という想いがあり、実際に生花を取り入れています。水やりや管理の手間はありますが、職員からは「リラックスできる」「仕事がやりやすくなった」と好評です。
――改革から1年を経て、今後の展望をお聞かせください。
斉木:
今回のレイアウト変更を通じて、職場全体が明るくなり、打合せスペースの充実や動線の改善など、業務のしやすさに直結する効果を実感することができました。一方で、物理的な環境は整いましたが、脇机がなくなったことで机の上に物が溜まりがちになるなど、維持の難しさも見えてきました。今後は「机の上には今日使う書類だけを置く」「文具は島ごとの共有ストッカーへ」といったルールや工夫を定着させていく必要があります。
オフィス改革は一度で終わりではありません。実際の使い心地に応じて小さな改善を積み重ね、職員の皆さんがより業務に集中できる環境を自分たちの手で育てていきたいと考えています。


