
“ワーケーション”が注目されるのはなぜ? 向いている職種と今後の見通しを解説
近年、仕事と休暇を融合させた“ワーケーション”という新たな働き方が注目されています。オフィスから離れた旅先や観光地で仕事をすることで、仕事の質の向上、イノベーションの創出、人材流出の抑止などのメリットが期待されています。
しかし、職種によっては旅先や観光地での業務が難しいケースもあるため、「自社で取り組むのは難しそう」と導入を悩んでいる担当者の方もいるのではないでしょうか。
ワーケーションの導入にあたっては、仕事の進め方や必要な設備などを考慮して決定することが重要です。本記事では、ワーケーションが注目される背景や向いている職種、今後の見通しについて解説します。
ワーケーションのメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
目次[非表示]
ワーケーションが注目される背景
ワーケーションが注目される背景には、働き方改革の推進と新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)によるテレワークの浸透と観光産業の低迷が挙げられます。
働き方改革の推進
働き方改革の目的は、働く人がそれぞれの事情に応じて、柔軟に働き方を選択できる社会の実現です。働き方改革の取組みとして、企業に年5日の有給休暇の取得が義務付けられました。
オフィスや自宅から離れて、場所にとらわれない柔軟な働き方ができるワーケーションは、まさに多様な働き方の実現、有給休暇の取得促進につながると考えられます。
このように、企業の働き方改革を実現するための取組みの一環として、自律的・創造的な働き方ができるワーケーションが注目されています。
出典:厚生労働省『働き方改革』
テレワークの浸透
コロナ禍でテレワークが浸透したことも、場所にとらわれず仕事ができるワーケーションが注目されている背景の一つです。
環境省『新型コロナウイルスにより生じた旅行・観光に対するニーズや志向変化』によると、コロナの影響によってオンライン業務やテレワークが浸透したことで、多くの人がワーケーションに興味を示していることが分かっています。
ワーケーションに興味がある方は、メリットとして「リフレッシュする時間が取れる」「仕事とプライベートを両立させられる」などを挙げています。
リフレッシュを兼ねて、プライベートと仕事を両立できるワーケーションは、ニューノーマル時代における働き方の選択肢の一つになると考えられます。
出典:環境省『新型コロナウイルスにより生じた旅行・観光に対するニーズや志向変化』
観光産業の低迷
コロナの流行によって旅行の需要が大きく落ち込み、観光業界も厳しい状況に置かれています。アフターコロナを見据えて、地方経済の立ち直りや観光産業の成長を図るためには、観光を通じた地域活性化が求められます。
旅先・観光地で休暇を兼ねて仕事をするワーケーションは、より多くのワーカーに旅行機会を創出して、観光産業の活性化を後押しすることが期待されます。
また、特定の時期・場所に旅行需要が集中することを防ぎ、旅行需要を分散化させることで、コロナ対策にもつながると考えられます。このように、観光産業の低迷を受けて、旅行機会の創出や旅行需要の分散化につながることもワーケーションが注目されている背景の一つです。
出典:国土交通省 観光庁『「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー』『アフターコロナ時代における地域活性化と観光産業に関する検討会』
ワーケーションに向いている職種
ワーケーションでは、オフィスや自宅から離れた場所で仕事をするため、オンラインでの業務環境に対応できる職種が向いているといえます。
具体的には、対面でのやり取りが不要な業務、インターネット環境があれば対応できる業務が挙げられます。また、仕事の成果物についてデータで共有しやすい仕事も、会社側の評価制度や社内フローを整えやすいため、ワーケーションを導入しやすいといえます。
総務省の資料によると、テレワーク実施率の多い業種は、情報通信業(55.7%)、次いで学術研究、専門・技術サービス業(43.2%)という結果になっています。
▼業種別のテレワーク実施率
画像引用元:総務省『デジタルで支える暮らしと経済』
▼ワーケーションに向いている職種例
- ITエンジニア・プログラマー
- 動画・映像クリエイター
- デザイナー・イラストレーター
- ライター・編集者
- Webマーケター
- 営業職
- コンサルタント
現在オンライン環境で業務ができない職種でも、ペーパーレス化やオンラインシステムの活用、業務フローの見直しによって、ワーケーションを実現できる場合もあります。
出典:総務省『デジタルで支える暮らしと経済』
ワーケーションの今後と実現に向けて
ワーケーションの需要は今後も高まると考えられています。理由として、コロナの影響によってテレワークが進行したことで、地方への関心が高まっていることが挙げられます。
実際に全国の農泊地域において、一等貸しやテレワーク等のワーケーションに関する問合せが210件あると農林水産省が報告しています。2022年3月のワーケーションの導入率は5.3%と決して高い数値ではありませんが、2020年度と比べると2%上がっていることから、今後も少しずつ増えていくことが予想されます。
また、環境省の資料によると、ワーカーの約4分の3がオンライン業務やテレワークの継続を望んでいることが分かっています。さらに、モデル企業40社が行ったワーケーションのトライアルプログラムでは、参加企業・参加者ともに、以下のような結果が明らかになりました。
▼ワーケーションで明らかになったこと
参加者の総合満足度 |
92.4% |
参加企業の成果の実感度合い |
85.0% |
参加企業の今後のワーケーション推進意向 |
72.5% |
国土交通省 観光庁『今年度事業の結果報告』を基に作成
参加者においては、働く場所の雰囲気や周辺環境についての満足度が高く、リフレッシュの実感やコミュニケーション活性化などの効果が見られました。
参加企業の72.5%も、金額の負担面や社内の働き方の不公平感などを考慮しつつ、ワーケーション推進の意向を示しています。
なお、観光庁では、ワーケーションの導入促進に向けて、企業向けセミナーやSNSでの情報発信などさまざまな取組みを行っています。
ワーケーションの普及に向けて、今後もモデル事業の継続を行い、好事例や効果などの見える化を図る必要があると考えられています。ワーケーションの導入を検討中の方は、国や自治体が発表した事例・情報を参考にしながら準備を進めてみてはいかがでしょうか。
出典:農林水産省『(3)地方への関心や働き方、交流に関する新たな動き ア 地方への関心の高まり』/国土交通省 観光庁 『今年度事業の結果報告』/環境省『新型コロナウイルスにより生じた旅行・観光に対するニーズや志向変化』
まとめ
この記事では、ワーケーションについて以下の内容を解説しました。
- ワーケーションが注目される背景
- ワーケーションに向いている職種
- ワーケーションの今後と実現に向けて
ワーケーションは、働き方改革の推進やコロナによるテレワークの浸透、旅行産業の落ち込みなどを背景に、注目が高まっている新たな働き方です。
オフィスや自宅から離れて、休暇を楽しみながら仕事ができることは、多様な働き方の実現、リフレッシュの促進につながります。職種については、対面のやり取りが必要なく、インターネットがあれば業務ができる仕事が向いているといえます。
今後もテレワーク・オンライン業務の継続が考えられるなか、ワーケーションの需要も高まると予想されます。実際に、国が行ったモデル企業へのワーケーションプログラムでは、8割以上の企業・参加者が満足感や成果を得ている状況です。
ワーカーのワークライフバランスの向上やイノベーションの創出などにつなげるために、ワーケーションの導入を検討されてはいかがでしょうか。
【Workcation House U】
例えば小田原にあるWorkcation House U(ワーケーションハウス ユー)では、自然に囲まれ、海を眺めながら快適に過ごすことができます。
こういった環境でリフレッシュしながら、普段と異なった業務やアイデアの検討を行ってみてはいかがでしょうか。
ワーケーションの2つの働き方と導入効果については、こちらの記事で解説しています。