202205_05_心理的安全性とは? 企業にもたらすメリットとオフィスづくりのポイント

心理的安全性とは? 企業にもたらすメリットとオフィスづくりのポイント

企業活動における生産性の向上やイノベーションの創出のためには、ワーカー同士が円滑な意思疎通を行うことだけではなく、多様な視点から率直に意見・アイデアを出し合える環境が求められます。

そこで重要となるのが、“心理的安全性”です。心理的安全性とは、心理学用語の一つで、個人が自身の意見について、周囲に気兼ねなくありのまま発信できる状態のことを指します。

企業においては、上司・同僚の意見を恐れたり恥ずかしがったりせずに、意見・アイデアを出し合える環境のことをいいます。オフィス環境を考えるうえでも、この心理的安全性を意識することが重要です。

本記事では、心理的安全性がもたらすメリットやオフィス環境づくりのポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.心理的安全性の定義と注目される背景
  2. 2.心理的安全性のある職場をつくるメリット
    1. 2.1.パフォーマンスの向上
    2. 2.2.定着率の向上
    3. 2.3.コミュニケーションの活性化
  3. 3.心理的安全性を高めるオフィスづくりのポイント
    1. 3.1.①オープンなミーティングスペース
    2. 3.2.②自然な会話を生むリフレッシュスペース
    3. 3.3.③自由に働く場所を選べるレイアウト
  4. 4.まとめ


心理的安全性の定義と注目される背景

心理的安全性は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンソン氏が提唱した概念です。同氏は、心理的安全性を「チームの対人関係においてリスクのある行動を取った場合でもこのチームでは安全である」というチームメンバーで共有された考えと定義しています。

心理的安全性が注目される背景には、Googleが行った調査で、チームの効果性が高いチームに固有する要素のうち、心理的安全性が圧倒的に重要であるとの結果を示したことが挙げられます。

Googleでは、社内の効果的なチームの特徴を把握するために、チームの効果性に影響する要素についてチームメンバーへの調査を実施しました。

そして、チームの効果性に影響する要素を重要な順に示しました。


▼チームの効果性に影響する要素

  1. 心理的安全性
  2. 相互信頼
  3. 構造と明確さ
  4. 仕事の意味
  5. インパクト

調査の結果、心理的安全性がチームの効率性に影響する重要な要素ということが明らかになりました。

また、同調査結果によると、心理的安全性の高いチームメンバーには、以下のような特徴が見られました。


▼心理的安全性の高いチームメンバーの特徴

  • 離職率が低い
  • ほかのチームメンバーが発案したアイデアをうまく利用している
  • 収益性が高い
  • 効果的に働いているという点においてマネージャーから評価される機会が2倍多い

このように、ワーカーの心理的安全性を確保できる職場環境・人間関係の構築が、企業の利益につながることが分かります。

ワーカー同士が自らの意見・アイデアをオープンに発信できて、気兼ねなくコミュニケーションが取れる職場は、心理的安全性が高い職場といえます。

出典:Google『「効果的なチームとは何か」を知る



心理的安全性のある職場をつくるメリット

心理的安全性を確保した職場をつくることは、企業にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、心理的安全性が企業にもたらすメリットについて紹介します。


パフォーマンスの向上

心理的安全性のある職場環境は、ワーカーやチーム全体のパフォーマンス向上につながります。

お互いの意見を尊重して、多様な価値観を受容する環境があると、ワーカーが安心して仕事に打ち込めるようになります。

また、自発的に行動したり、積極的に意見や議論を交わしたりする機会が増えることで、個々のパフォーマンスが向上して、生産性や売り上げの向上につながることが期待できます。


定着率の向上

心理的安全性が確保されている職場は、ワーカーの定着率向上も期待できます。

一人ひとりの価値観や考え方を否定せずに、職場全体がそれを認め合う環境をつくることで、ワーカーが仕事にやりがい・責任感を持ちやすくなります。

また、職場の風通しがよくなることは、ワーカーが企業に貢献したいと思う従業員エンゲージメントの向上にもつながります。「長く働きたい」「同僚や上司とともに成長したい」といった企業への帰属意識が生まれることで、人材が定着しやすい環境を構築できます。


コミュニケーションの活性化

社内のコミュニケーションを活性化できることも、心理的安全性のある職場環境のメリットです。

他人の目を気にせず、自分の意見をありのまま伝えられる環境では、ワーカーが自分の能力やアイデアを積極的に発信しやすくなります。

社内のコミュニケーションが活性化することで、ほかのワーカーのアイデアを取り入れたり、失敗例を自分の仕事に活かしたりすることが可能です。その結果、チーム内の課題解決や新たなイノベーションの創出につながることが期待できます。



心理的安全性を高めるオフィスづくりのポイント

誰もが率直に意見を言いやすく、風通しのよい環境をつくるためには、オフィスづくりも重要なカギとなります。ここでは、心理的安全性を高めるオフィスづくりのポイントを紹介します。


①オープンなミーティングスペース

心理的安全性を高めるオフィスづくりとして、気軽に集まってミーティングを行えるオープンなスペースを導入する方法があります。

オープンなミーティングスペースを設けることで、些細な相談や急な打ち合わせなど、気兼ねなくメンバーとコミュニケーションを取れるようになります。

個室の会議室と比べて、肩ひじを張らないオープンな空間はワーカーの緊張感を和らげて積極的な発言の促進も期待できます。


▼ミーティングスペースの導入例

  • 執務エリアの一角にスタンディングカウンターを設置する
  • エントランスや休憩室の一角にソファ席のミーティングスペースを設ける


②自然な会話を生むリフレッシュスペース

部署やチームの垣根を超えて、さまざまな人が交流できるリフレッシュスペースを導入することも、心理的安全性を高める一つの方法です。

仕事から離れてくつろげる空間は、心身のリフレッシュを促して、ワーカー同士の自然な会話が生まれやすくなります。普段接点のない人とのコミュニケーションから、仕事に関係のない会話から思わぬヒントやアイデアにつながる可能性もあります。


▼リフレッシュスペースの導入例

  • 部署同士がつながる場所にカフェスペースを設置する
  • 休憩室や食堂に多様なデスク・椅子を用意する
  • 適度な運動やアクティビティができるスペースを導入する
  • 靴を脱いでくつろげる小上がりスペースを導入する


③自由に働く場所を選べるレイアウト

業務内容や気分に合わせて、ワーカー自身が働く場所を選べる“ABW(Activity Based Working)”という働き方があります。ABWをオフィスに導入することも、心理的安全性を高めるために有効です。

時間や業務場所に縛られないオフィスをつくることで、ワーカーが業務内容やその日の気分に合わせて働き方を選べるようになり、精神的な負担を軽減できます。

たとえば、集中したいときは個人ブース、チームメンバーと相談したり、アイデアを出し合ったりするときにはオープンなテーブル席など、メリハリを生むことがチームワークの強化につながります。


▼ABWの導入例

  • 固定席をなくしてフリーアドレス席と集中ブースを設ける
  • 執務エリア内に種類や形状の異なるデスク・チェアを設ける



まとめ

この記事では、心理的安全性について、以下の項目で解説しました。

  • 心理的安全性の定義と注目される背景
  • 心理的安全性のある職場をつくるメリット
  • 心理的安全性を高めるオフィスづくりのポイント

心理的安全性が確保された職場環境は、コミュニケーションが活発になり、ワーカー同士の信頼関係の構築や新たな意見・アイデアの創出に貢献します。

心理的安全性を向上させるには、一人ひとりが個人を尊重して多様性を受容する意識を持つことのほか、ワーカー同士が気軽に話しやすい雰囲気をつくることが重要です。

オフィスづくりにおいては、オープンなミーティングスペースの設置や働く場所を選べるレイアウトの構築などにより、ワーカー同士が気兼ねなく会話を交わしたり、積極的に意見交換したりできる環境を整備することがポイントといえます。

心理的安全性が確保されたオフィスは、生産性やワーカーの定着率の向上、ひいては従業員エンゲージメントの向上、新たなイノベーションの創出にもつながります。企業の成長に向けて、心理的安全性を意識したオフィスづくりに取組んでみてはいかがでしょうか。

従業員エンゲージメントを向上させるオフィスづくりについては、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

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