テレプレゼンスとは? メリットや活用例を交えて解説
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大を受けて、“非接触”や“非対面”というキーワードが今日の生活に定着しつつあります。それに伴い、あらゆる場面で、“遠隔”という手段が用いられるようになりました。
画像引用元:総務省『令和2年 通信利用動向調査の結果(概要)』
特に顕著なのは労働環境です。20%前後で頭打ち状態だったテレワークの導入率が、国内でコロナの感染が拡大し始めた2020年を境に半数近くまで増加しています。
2022年は、「オフィスにいなくても仕事ができる」「 遠隔地から仕事ができる」という環境が広く整いつつあると考えられます。
一方で、テレワークならではの課題も一部生じています。たとえば、“コミュニケーションの希薄化”はその筆頭ともいえます。Web会議ツールやチャットツールなど、遠隔地にいながらコミュニケーションをとる手段は多々あります。
それにもかかわらず、問題が提起される背景には、コミュニケーションの量や質の問題が絡んでいる可能性が考えられます。
そこで、“コミュニケーションの希薄化”の打開策として注目を集めているのが“テレプレゼンス”という技術です。テレプレゼンスの利用により、非対面におけるコミュニケーションの量や質を向上できるのではないかと期待が寄せられています。
本記事では、テレプレゼンスについて、メリットや活用例を交えて解説します。
出典:総務省『令和2年 通信利用動向調査の結果(概要)』
目次[非表示]
- 1.テレプレゼンスとは
- 2.テレプレゼンスのメリット
- 2.1.①常時接続による存在感
- 2.2.②リアルな臨場感
- 3.テレプレゼンスの活用例
- 4.まとめ
テレプレゼンスとは
テレプレゼンスとは、遠隔地間の非対面のコミュニケーションを、まるで同じ場所で対面しているかのように体感できる技術・テクノロジーの総称です。
英単語のテレ(Tele:遠隔)とプレゼンス(Presence:存在感)を掛け合わせた造語で、テレプレゼンスの概念が生まれたのは1980年代頃といわれています。一般的なビデオ会議ツールとの大きな違いは投影方法です。
▼テレプレゼンスの投影方法例
テレプレゼンスロボット
ロボットの頭部に設置されたディスプレイに、接続先の相手の表情が映し出される方法です。ロボットの高さを調整して目線を合わせられるため、対面で会話しているような気分を味わえます。会議への参加のほか、遠隔地からの診察などに役立てられます。
大型ディスプレイ
大型ディスプレイに相手が等身大サイズで映し出される方法です。これにより、画面越しでも距離を感じさせない点が特徴です。複数人同士でのコミュニケーションに適しているといえます。
ホログラム
相手がホログラムで映し出される方法です。相手にモノを見せたり、実際に隣にいるかのように接したり、よりリアルなコミュニケーションを実現します。
自身のパソコンやスマートフォンなどの端末を用いることが一般的なビデオ会議ツールと異なり、テレプレゼンスは例に挙げたような専用デバイスを活用して環境を構築するのが特徴です。専用デバイスによって解像度や品質の高い映像・音声でコミュニケーションがとれるため、物理的な距離を感じさせない会議を実現できます。
テレプレゼンスという名の由来のとおり、各デバイスには遠隔にいる相手の“存在”を感じられる工夫が各社各様に施されています。
テレプレゼンスのメリット
どのデバイスを選択するかによってもメリットは異なりますが、特に注目したい2つのメリットをピックアップして紹介します。
①常時接続による存在感
1つ目は、常時接続によって、遠隔にいる相手の存在感を高められる点です。テレプレゼンス用のデバイスの多くは、常時接続を想定してつくられています。
たとえば、常時接続で相手の状態をいつでも確認できることにより、コミュニケーションのタイミングを見計らいやすくなります。
これまで、遠隔では気軽にできなかった雑談や簡単な質疑応答など、ささいなコミュニケーションの量を増やすきっかけにもつながります。
②リアルな臨場感
2つ目は、一般的なビデオ会議よりもリアリティを感じられる点です。等身大サイズでの投影により、従来のビデオ会議では味わうことのできない臨場感を得ることができます。
また、臨場感のあるコミュニケーションにより、表情やボディランゲージなどによる、ノンバーバルコミュニケーション(Non-Verbal Communication:非言語コミュニケーション)の活性化につながると考えられます。
ノンバーバルコミュニケーションの重要性は『メラビアンの法則』(※1)でも実証されています。
遠隔であることを感じさせない臨場感によって、コミュニケーションの質を高める効果が期待できます。
※1・・・メラビアンの法則とは、他人とのコミュニケーションに際して、人間は言語情報・聴覚情報・視覚情報の3つで相手を判断するという研究結果のこと。言語情報が占める割合はわずか7%といわれている。
テレプレゼンスの活用例
テレプレゼンスの活用はさまざまな可能性を秘めています。ここでは、4つのシーンにおける活用例を紹介します。
①テレワーク
これまでに解説したように、テレプレゼンスはテレワーク時のコミュニケーションの質を高めるために活用できます。
テレプレゼンスを導入することで、職場全体の求心力や連帯感の向上だけではなく、冒頭で挙げたコミュニケーションの希薄化の解消にも寄与することが期待できます。
また、テレワークは、業務内容によって導入が可能なワーカーと難しいワーカーに分かれてしまうことがあります。そのような場合でも、テレプレゼンスの常時接続により、テレワーカーが感じやすい疎外感の低減をもたらすことが可能です。
さらに、拠点が複数あり、会議のために定期的に出張をしなければならないといった場合にもテレプレゼンスが役立ちます。交通費や出張費の削減にも貢献すると考えられます。
▼期待できる効果
- 求心力や連帯感の向上
- 不公平感あるいは疎外感の低減
- 交通費や出張費の削減
②採用活動
テレプレゼンスは、ワーカーだけではなく求職者への採用活動にも活用できます。ここでは、採用活動をオフィス見学と採用面接に分けて解説します。
オフィス見学
コロナ禍といわれるいま、求職者が実際にオフィスに足を運んで見学をするのが難しい状況です。採用スケジュールの変更や中止によって、採用活動がスムーズに進まないことを不安に感じている求職者も少なくありません。
そのような状況で、移動型のテレプレゼンスロボットを導入すれば、遠隔地の企業でも社内の雰囲気をリアルに感じることができます。また、案内する担当者も説明に集中できるため、スムーズなオフィス見学の実施が可能です。
地方や海外ですぐにオフィスへ来れない方にも参加してもらえるため、より多くの候補者から優秀な人材を確保できる可能性が広がるといえます。
▼期待できる効果
- 優秀な人材の獲得
- 求職者の不安軽減
採用面接
テレプレゼンスは、遠隔で行う採用面接にも活用できます。オンラインで行う面接の課題として「人となりを判断しにくい」という点が挙げられます。
また、言葉による情報のみで評価する必要があるため、面接室への入退室の動作や仕草などの情報を含めて評価できるオフラインの面接とくらべて、人材の見極めが難しいことも課題の一つです。
このような課題を解決へ導いてくれるのがテレプレゼンスです。たとえば、大型ディスプレイに等身大サイズの応募者が映し出されることで、デスクを挟んで対面しているかのように会話ができるほか、応募者の表情や仕草など、ノンバーバルな情報も確認できます。
このように、求職者と採用担当者のミスマッチの低減や採用面接全体の品質向上に役立てられます。
▼期待できる効果
- 求職者と企業間のミスマッチの低減
- 採用面接の品質向上
③遠隔診療
オフィス内の活用だけではなく、医療機関でも活用されています。医療機関用に開発されたテレプレゼンスロボットも展開されており、コロナの感染リスク低減や診療の効率化などに貢献しています。
医療機関で活用する際は、遠隔診療のほか、コロナ禍で制限されている入院患者との面会にも役立てられます。
テレプレゼンスでの面会が可能になれば、患者自身と患者家族の双方の精神的な負担軽減にもつながると考えられます。
▼期待できる効果
- コロナ感染リスクの低減
- 診療の効率化
- 面会の柔軟化
④授業・講習・セミナー
オンラインによる授業・講習・セミナーは、講義者側が一方的に話すことが多いという性質があります。
テレプレゼンスの活用で、講義者側のリアリティを追求することにより、受講者側の参加意識の向上のほか、受講者の表情から理解度を読み解くことも容易になると考えられます。また、双方向のコミュニケーションの活性化も期待できます。
▼期待できる効果
- 双方向のコミュニケーション活性化
- 受講者の参加意識の向上
まとめ
この記事では、テレワークによるコミュニケーションの希薄化を解消するテレプレゼンスについて、以下の項目で解説しました。
- テレプレゼンスとは
- テレプレゼンスのメリット
- テレプレゼンスの活用例
テレプレゼンスは、専用デバイスを使用することで、より高品質な映像・音声でのコミュニケーションを可能にする技術です。遠隔地の人ともお互いが同じ空間にいるような臨場感のあるコミュニケーションがとれるため、テレワークや採用活動などで活用されています。
また、テレプレゼンスによって、テレワーカーの疎外感の低減やオンライン面接時のミスマッチの低減などの効果も期待できます。
遠隔によるコミュニケーションの機会は、今後も継続して増えていくことが予想されます。遠隔でコミュニケーションをとる手段となるビデオ会議ツールやチャットツールなどでコミュニケーションの量や質に課題を感じている場合は、課題解決の手段の一つとしてテレプレゼンスの活用がおすすめです。
今回は、活用例として一部を紹介しましたが、創造の幅を広げて、枠にとらわれない活用方法を模索してみるのもよいのではないでしょうか。
さらに、こちらの記事では、テレワークを導入する際にどのようなオフィスネットワーク環境が必要か紹介しています。ぜひご覧ください。