初めてのオフィス移転の参考に! オフィス移転マニュアル
働き方改革や新型コロナウイルスの影響を受けて、オフィスの使い方や働き方を見直している企業も多いのではないでしょうか。
テレワークの導入によるオフィスの稼働率低下や、Web会議をはじめとするオンライン上の業務に対応した設備やスペースの必要性の高まりを踏まえてオフィスの移転を検討している企業もあるようです。
しかし、新オフィスの選定から各種工事の手配、事業者とのやり取りなど、実際に対応しなければならないことも多いため「何から始めればよいか分からない」「どういうことに注意すればよいのか分からない」と悩んでいる方も多いはず。
そこで、今回はこれまでにオフィス移転を経験したことのない方でもスムーズに移転を進められるよう、オフィス移転に関する各種工程や押さえておきたいポイントを「移転前」と「移転後」に分けて解説します。オフィス移転のマニュアルとして、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.移転前に行うこと
- 1.1.テーマ設定
- 1.2.オフィス解約
- 1.2.1.退去予告期間には気を付ける
- 1.2.2.契約形態と特約事項にも確認すること
- 1.3.物件を探す
- 1.4.物件を契約する
- 1.4.1.契約時に確認しておく費用
- 1.4.2.契約時に必要な書類
- 1.5.現状調査を行う
- 1.6.オフィスレイアウトを考える
- 1.7.オフィス家具を選ぶ
- 1.8.工事会社を選ぶ
- 1.9.取引先に知らせる
- 1.10.挨拶状を送る
- 1.11.不用品を処分する
- 2.移転後に行うこと
- 2.1.各種届出の提出
- 2.2.自社ホームページの更新
- 3.まとめ
移転前に行うこと
オフィス移転で発生する作業は、大きく「移転前に行うこと」と「移転後に行うこと」に分けられます。
移転の計画を立てるうえで重要なポイントや解約手続きで注意が必要な点を含め、まずは移転前に行うことを整理してみましょう。
テーマ設定
オフィス移転でまず行っておきたいのがテーマ設定です。
オフィスで働くワーカーは「収納場所が少なくて困っている」「関係のある部署と連携がとれない」「休憩室がいつもいっぱいで座れない」など、さまざまな課題や悩みを抱えています。経営層の意見だけでなく現場の声に耳を傾け、移転の目的を明確にすることが大切です。
現状の課題を把握したあとは、どのようなオフィスにしたいのかという具体的なテーマを策定しましょう。社内の人間はもちろん、設計を依頼する事業者にも伝わりやすいよう、課題を改善するための条件を一つひとつ整理するのがポイントです。
オフィス解約
新しいオフィスを決める前に、旧オフィスの解約条件を確認しておきましょう。オフィスの賃貸借契約では、退去する6ヶ月前までに解約通知を提出するよう定められているケースが一般的です。
退去予告期間には気を付ける
退去予告期間の条件を満たさずにオフィスを移転した場合、賃料が2重にかかってしまう恐れがあります。
退去予告期間は契約によって異なるため、事前に管理会社に問合せるか、契約書を確認しておきます。この時点で原状回復工事についても問合せておくのがベストです。
契約形態と特約事項にも確認すること
契約書のなかでも契約形態と特約事項については特に注意して確認しましょう。特約事項は契約の条文にある内容の上書きや補足の意味があるため、本来の条文よりも強い効力を持ちます。
たとえば、フリーレントのようなキャンペーン要素のある契約を結んだ場合、特約事項に初回契約期間内の解約に違約金が発生するか否かが記載されています。契約内容をきちんと確認しないまま解約をすると、違約金の発生やトラブルの原因につながります。契約期間や違約金については細かく確認しておくことが大切です。
物件を探す
物件の選定は、当初に決めたテーマに沿って行うことが大切です。インターネットで情報を収集するだけでなく、実際に足を運んで立地や周辺環境を確認します。
物件を探すときは、以下の項目をチェックしましょう。
● 物件の面積
● 床荷重
● 電気容量
● オフィス内の動線とレイアウト
● 水周りの清潔感
● ゴミ捨て場の状態
● 24時間出入り可能かどうか
これらの項目について事前に条件を設定しておくことで、物件選びをスムーズに進められます。物件の見た目だけでなく、設備や立地なども確認し、企業の事業計画を実行できるオフィスかどうかを判断します。
また、今後のランニングコストはオフィスの賃料によって変わります。従業員の交通費や営業ルートの効率などにも影響するため、賃料や交通費、工事費などのコストを含めた検討が重要です。
物件を契約する
希望の物件が決まったら契約に進みます。
オフィスの賃貸借契約では、毎月の賃料だけでなく敷金や礼金、仲介手数料などのさまざまな費用が発生します。予算を管理するためにも事前に以下の費用を確認しておきましょう。
契約時に確認しておく費用
● 敷金
● 保証金
● 礼金権利金
● 償却費
● 仲介手数料
● 退去予告期間
● 特約事項の内容
● 更新費用の有無
● 特約事項
また、オフィスの契約締結時には以下の書類が必要です。取り寄せに日数がかかる場合もあるため、余裕を持って準備します。
契約時に必要な書類
契約者(会社)
● 履歴事項全部証明書(会社謄本)
● 印鑑証明書
● 実印
連帯保証人(代表者)
● 住民票
● 印鑑証明書
● 実印
会社謄本・住民票・印鑑証明については取得3ヶ月以内の原本が必要です。
また、会社の社判(ゴム印)を用意しておくとスムーズに進められます。契約する物件や不動産会社によっては、会社のパンフレットや3期分の決算書(損益計算書・貸借対照表・販管費一覧)が求められる場合もあります。
物件によっては、連帯保証人の公的収入証明書が必要な場合もあるため、必要書類に関しては早めに確認してリストアップします。
現状調査を行う
物件の契約が済んだら現状調査を行います。現状調査の目的は、現オフィスで抱える課題や企業として目指したい働き方および目的に合わせたコンセプトを明確化することです。
従業員のアンケートによって不満や課題を調査するだけでなく、以下も確認しておきましょう。
● 会議の利用率
● 在席率
● 書類の量
調査によってこれらの項目を具体的に数値化すると、組織として本当に必要な会議室の数や、どのようなオフィスが望ましいかが見えやすくなります。
また、調査委託を行うと専門的な目線でアドバイスがもらえるため、調査をプロに委託するのもおすすめです。
オフィスレイアウトを考える
オフィス移転は長年蓄積されたオフィスの問題点を改善できるチャンスです。新しいオフィスでは、移転の目的達成とともに問題点の改善を実現できるようなレイアウトを意識します。
テレワークやWeb会議などの新しい働き方や業務体制に対応するためのよい機会となるため、移転の目的や課題を明確化させたうえでレイアウトや設備について検討しましょう。
必ず導入したいスペースを洗い出し、執務室や休憩室、打合せスペースなどの大まかなゾーニングを行います。デスクの配置や動線、コミュニケーションの取りやすさなど考慮し、細かな位置を調節していくのがポイントです。オフィスにもトレンドがあるため、世の中の流れや働き方に合わせたレイアウトを考えましょう。
どのようなレイアウトにすればよいか分からない場合は、オフィス設計のプロと相談しながら、最適なオフィス空間をつくり上げていきましょう。
オフィス家具を選ぶ
移転に伴い、オフィス家具を新たに購入することがあります。オフィス家具はオフィス全体のデザインを左右するだけでなく、ワーカーの使いやすさにかかわるものです。
「使いにくい」「体に合わない」といった家具は、業務効率の低下につながるおそれもあるため、慎重に選びます。同時にオフィス家具にかかるコストも忘れてはいけません。オフィス家具は、購入のほかにレンタルという手段もあるため、レイアウトや使いやすさ、コスト面のバランスを見ながら上手に選ぶことが重要です。
また、現在使用しているオフィス家具の処分方法についても事前に決めておきます。廃棄する場合は産廃処理業者に連絡し、販売する場合は中古家具販売業者を選びます。
工事会社を選ぶ
新しいオフィスの設計プランや家具などが決まったら、内装やインフラの工事を進めます。
オフィス移転に必要な工事には以下のようなものがあります。
● 内装・家具工事
● パーティション工事
● セキュリティ工事
● インフラ工事(電話・LAN・AV機器等)
● 電気設備工事
● 空調換気設備工事
● サイン工事(看板等)
工事をスタートできるのはオフィス契約日からです。それぞれの工事にかかる日数やコストを事前に見積もり、新オフィスの契約日と工事日数、引っ越し日を確認したうえで決定します。
また、新オフィスの鍵は契約開始日に不動産会社もしくは現地で受け取ります。不動産会社によっては前日の夕方に鍵の受け渡しが可能なケースもあるため、こちらもあらかじめ確認しておきましょう。
なお、移転に必要な工事は限られた期間で行わなければならないため、現場の安全管理が不可欠です。自社で対応が難しい場合は、工事の専門知識を持つプロに工事のマネジメントを任せるのも方法のひとつといえます。
取引先に知らせる
新オフィスへの引越し日が決まったら、取引先や民間サービスなどに移転の報告を行いましょう。
オフィス移転の通知先としては、以下があります。
● 新聞・雑誌・図書
● 社外団体
● ビル管理会社
● 管理人
● 投資先
● 証券会社
● 消耗品の購入先
● 植栽関係
● 電気・電話・ガス・プロバイダなど
● そのほか支払い義務がある相手
オフィス移転の報告が遅れると業務に影響が出る可能性があるため、引越し日が分かった時点ですみやかに報告するのが望ましいといえます。
挨拶状を送る
関係会社や株主、取引先などに移転の挨拶状を送付します。
移転の1.5ヶ月~2ヶ月ほど前に作成して、移転の1ヶ月~3週間前までに投函しましょう。
挨拶状の送付先としては以下が一般的です。
● 本社
● 関連会社(子会社・グループ会社など)
● 株主
● 顧客
● 納入業者・仕入れ業者など
● 金融機関
● 大学・短大・高専・高校(就職課・採用窓口)など
挨拶状を送る相手は企業によって異なるため、リストアップした宛先に漏れがないかを確認したうえで送付しましょう。
不用品を処分する
オフィス移転に伴い、現在使用しているオフィス家具や什器を処分することがあります。それらを処分する場合は産業廃棄の事業者に連絡して不用品の回収を依頼します。
家具や什器の状態がよい場合や、複数のものをまとめて処分する場合は、リサイクル業者に買い取ってもらえることもあります。そのほか、機密情報を含む書類やハードディスクなどは、自社でシュレッダーにかけたり、専門業者に溶解処分を依頼したり、適切に処理することが重要です。
移転後に行うこと
オフィス移転は新オフィスに引越しして終了するわけではありません。旧オフィスの原状回復工事の開始や保証金の精算を含め、やらなければならないことがいくつもあります。
そのなかで、提出期限のある各種届出や自社ホームページの更新について下記で確認してみましょう。
各種届出の提出
移転後は、公的機関や民間企業を含め、各所へ届出の提出を行わなければなりません。
届出の提出が必要な機関には以下があります。
● 法務局
● 税務署
● 都道府県税事務所
● 社会保険事務所
● 郵便局
● 消防局 など
それぞれ提出期限が異なるため、届出の際に必要となる書類を含め事前に確認しておきましょう。
なお、届出の提出漏れを防ぐためにチェックリストを活用するのもおすすめです。
自社ホームページの更新
オフィス移転で忘れてはならないのが、自社ホームページに記載された住所の変更です。自社ホームページは社内で簡単に変更できるため、移転後に住所の部分を変更すれば完了します。
同様にオフィスの住所が記載されているものとして名刺があります。名刺の場合、制作の依頼から印刷までに時間を要するため、事前に新住所が記載された名刺の制作を印刷会社へ依頼しておき、移転後すぐに使用できるようにします。
住所と一緒に電話番号を変更する際は、ホームページ・名刺ともに電話番号の変更も行います。
まとめ
オフィス移転には、現オフィスの退去手続きから新オフィスの選定、工事の手続きなど、さまざまな業務が発生します。外部との打合せも多くなるほか、オフィス内部の工事については専門知識も必要です。
また、オフィス移転を成功させるためには、段階的にタスクをこなしていくことが大切です。オフィス移転のポイントやオフィス移転の計画に役立つ情報をまとめたガイドブックをご用意しておりますので、ぜひ併せてご活用ください。