ファシリティマネジメントとは? 効果と実施のポイントを解説
働き方改革やリモートワークの普及、ICTインフラの進化などによって、人々の働き方が変わりつつあります。
それらに伴い、オフィス移転を検討中の企業さまは規模の縮小・拡大だけでなく、経営戦略の一環として、働きやすい環境を検討することが重要です。
今回はオフィス環境におけるファシリティマネジメントの考え方とオフィス改善に向けてどのような取り組みが必要か、実施のポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.ファシリティマネジメントとは
- 2.ファシリティマネジメントで期待される4つの効果
- 2.1.①運用コストの最適化
- 2.2.②経営に適したオフィスの実現
- 2.3.③快適で魅力的なオフィス空間の実現
- 2.4.④省エネルギーによる環境対策の実現
- 3.ファシリティマネジメントを実施する3つのポイント
- 3.1.①オフィスの市場調査
- 3.2.②現状の調査と分析
- 3.3.③効果測定
- 4.まとめ
ファシリティマネジメントとは
ファシリティマネジメントとは、企業活動に関わるすべてのファシリティを総合的に管理して、戦略的に経営していくための経営管理方式です。
ファシリティには、設備や施設、便宜などの意味があります。企業においては企業活動のための建物や各種設備、オフィス空間などが含まれます。
ファシリティマネジメントの目的は、人や情報など、企業の経営資産をあらゆる観点から見直し、最適化することです。単純に設備や施設といった物理的なモノを維持・管理することだけではありません。
▼オフィスにおけるファシリティマネジメントの例
設備運用管理 |
設備資産や物品などの日常管理 |
保守点検・修繕管理 |
監視やメンテナンスなど運用維持のための管理 |
ワークプレイス管理 |
オフィスのレイアウトや温度、明るさなど働く環境維持のための管理 |
防災・エネルギー管理 |
施設を安全に運用するために必要な管理 |
近年では、働き方改革や多様なワークスタイルの普及、ICTシステム活性化などにより、さまざまな企業がオフィス環境の見直しを図っています。
企業経営を成功に導くためには、オフィスの規模だけではなく、ファシリティマネジメントの考えに基づいた環境の改善を図ることが重要です。
ファシリティマネジメントで期待される4つの効果
ファシリティマネジメントでオフィス環境を見直すことで、オフィス内の設備や空間などを適切に活用できるようになります。オフィス環境の最適化では、主に4つの効果が期待できます。
①運用コストの最適化
オフィス内の無駄なスペースや設備機器を見直すことで、運用コストの最適化が期待できます。賃料や設備機器に関わる費用などを最小に抑えることが可能です。
②経営に適したオフィスの実現
業務効率を低下させている設備や施設、レイアウトなどを洗い出し、適切なオフィスに改善することが可能です。企業経営において必要・不要な施設を把握して有効活用することで、経営効率の向上が期待できます。
③快適で魅力的なオフィス空間の実現
ワーカーが利用しやすいレイアウトやスペースを考慮し、取り入れることで快適かつ魅力的なオフィス空間を実現できます。ワーカーの満足度やモチベーションを高めるとともに、ファシリティを通じて生産性の向上にも貢献できます。
④省エネルギーによる環境対策の実現
固定費となる施設や設備費を見直し、省エネルギーを実現することで環境にも優しいオフィス環境を実現できます。環境問題の観点においても、ファシリティマネジメントの考え方が重要です。
ファシリティマネジメントを実施する3つのポイント
ワーカーの働きやすさや機能性、費用対効果まで考慮したオフィス環境を実現するには、適切な方法でファシリティマネジメントを進めなければなりません。
ファシリティマネジメントを実施するポイントは主に3つあります。
①オフィスの市場調査
1つ目はオフィスの市場調査を行うことです。
▼オフィス市場の調査項目例
- オフィスのトレンド調査
- 競合他社のオフィス調査
- 拠点別の適正賃料の調査
現代の働き方に合ったオフィスを実現するために、トレンドや競合他社の調査は欠かせません。費用対効果を考えるうえでは、当該エリアの適正賃料を把握しておくこともポイントです。
②現状の調査と分析
2つ目がオフィスの現状を分析して数値化することです。各スペースの利用時間や利用者数、業務に関わる設備やモノの使用状況、設備機器に関わるコストなどの状況を可視化します。
▼オフィスの現状調査の方法
ベンチマーキング |
競合他社との比較・分析を行い自社の参考にする手法 |
ワーカーアンケート |
スペース別の利用状況や用途について把握するための調査 |
レコードマネジメント調査 |
レコードマネジメント調査:文書量の測定、管理状態を把握する調査 |
設備・機器のコスト調査 |
オフィスの設備や機器の設置・維持にかかるコストの調査 |
そのほかにも、“内勤が多い”“外回りが多い”など、ワークスタイルの割合を洗い出すこともポイントです。現状の課題や改善が求められる箇所を発見しやすくなります。
③効果測定
3つ目は施策の有効性を検証するために、効果測定をもとに評価を行うことです。ワークプレイスの変化やICTの導入などにより、どのような変化があったのかを可視化することが目的です。
▼効果測定の項目例
- コミュニケーション
- 生産性
- 従業員満足度
- 設備・機器の管理コスト
効果測定は、費用対効果を考慮しながらあらゆる視点で行うことがポイントです。定期的に効果測定を行うことで、経営戦略上の目標に向けた改善策を講じられます。
まとめ
企業がオフィスの環境改善を図る際は、規模の縮小・拡大だけでなくオフィス内の施設や設備などを経営資源として捉え、戦略的に活用していくファシリティマネジメントという考え方が求められます。
オフィス内のファシリティを最適化することで、運用コストの削減や経営効率の向上、円滑な企業活動の実現が期待できます。ワーカーにとって快適で魅力的なオフィス空間を実現できれば、モチベーションや満足度の向上にもつながります。
ファシリティマネジメントを進めるには、オフィスの現状を調査したうえで、今後の事業計画や経営目標といった経営戦略と結び付けることがポイントです。
「オフィスをどう改善すればよいか分からない」「プロジェクト運用に関わる人材リソースを確保できない」といった企業さまは、ファシリティマネジメントを支援する外部サービスの活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。