フリーアドレスに失敗する原因と成功させるためのポイント
フリーアドレスとは、座席を固定化せず、ワーカーが自由に座席を選んで働くオフィススタイルのことです。
オフィスの省スペース化によるコスト削減やコミュニケーション促進などのさまざまなメリットがある一方で、導入に失敗してしまうケースもあります。
フリーアドレスを導入する際は、事前に成功のための要件を把握しておくことが大切です。本記事では、フリーアドレスでよくある失敗の原因を踏まえて、導入を成功させるためのポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.フリーアドレスの目的とは
- 2.フリーアドレスでよくある失敗例と原因
- 2.1.席が固定化してしまう
- 2.2.コミュニケーションが取りにくい
- 2.3.見た目だけを重視している
- 3.フリーアドレスを成功させるための要件
- 3.1.導入目的を明確化する
- 3.2.ワーカーの意見を取り入れる
- 3.3.デスクやチェアのレイアウト・デザインを工夫する
- 4.効果的なフリーアドレスの導入事例
- 4.1.株式会社Agoop様
- 4.2.株式会社eumo様
- 4.3.ACメディカル株式会社様
- 5.まとめ
フリーアドレスの目的とは
フリーアドレスの目的は、自ら席を選ぶことでワーカー一人ひとりが自律的に働ける環境をつくることです。
また、執務スペースのデスク数を減らせるため、スペース効率の向上にもつながります。
▼フリーアドレスの導入によって期待できる効果例
- オフィスの縮小化によるコスト削減
- 空いたスペースの有効活用による職場環境改善
- 部署の垣根を超えたコミュニケーションの活性化
フリーアドレスでよくある失敗例と原因
さまざまな効果を期待できるフリーアドレスですが、失敗に至ってしまうケースもあります。導入後の失敗を防ぐためにも、具体的な失敗例やその原因を把握しておくことが大切です。
席が固定化してしまう
フリーアドレス導入から数ヶ月ほど経った頃に、ワーカーの座席が固定化してしまうことがあります。
▼席が固定化する原因の例
- どの席に座っても代わり映えせず、選び甲斐がない
- 席を毎日選ぶことを面倒に感じる
- 業務に必要な資料等の持ち運びが不便
同じデスクやチェアを並べただけのレイアウトでは、周りに座る人が変わるだけで、席を選ぶことに魅力を感じられません。しかし、席替えをルール化にストレスに感じるワーカーもいます。
また、座席に私物を置けないことから席を移動するときや荷物の持ち運びが不便に感じることもあります。フリーアドレスを成功させるには、主体的に座席を選べるように、配置だけでなくデザイン・サイズ・高さの異なるデスクやチェアを用意するといった工夫が必要です。
コミュニケーションが取りにくい
固定席がなくなることで、従業員同士の居場所を把握しづらくなります。
特に、部署によって階層が分かれているオフィス、ワンフロアで広いオフィスでは、チャットツールや電話などで居場所を聞き出すといった労力がかかることもあります。
▼不便さを感じやすいシーンの例
- 担当者と打ち合わせしたいときになかなか見つからない
- チームで仕事を進めたいときに全員が集まるまでに時間がかかる
チャットで連絡できる内容であればよいですが、仕事内容や状況によっては対面での「報・連・相」が必要です。コミュニケーションがスムーズにできなければ、業務効率の低下につながる可能性もあります。
見た目だけを重視している
見た目重視のレイアウトやデザインにこだわることも、フリーアドレスでよくある失敗の一つです。
オフィスを“おしゃれにすること”だけを目的に導入すると、フリーアドレス本来の目的を果たせません。また、仕事の内容によってはフリーアドレス自体が向いていない場合もあります。
▼見た目だけを重視したときに直面しやすい問題の例
- フリーアドレスを導入した結果、一部の社員から不満の声が上がった
- レイアウトの変更により使用していたスペースがなくなり不便になった
- 見た目はよくなったがオフィスの機能性が低下してしまった
使いやすさや仕事内容を考慮せずにフリーアドレスを導入すると、ワーカーの理解が得られず、業務効率の低下につながることもあります。
一方的に導入計画を進めるのではなく、ワーカーの意見やニーズを把握したうえで導入を決める必要があります。
フリーアドレスを成功させるための要件
オフィスのフリーアドレス導入を成功させるためには、失敗する原因を把握し、成功させる要件を押さえる必要があります。
導入目的を明確化する
導入の目的は、生産性の向上や働き方の改善、アイデア創出など企業によって異なります。フリーアドレス導入後の目標を決めて、運用イメージを明確化しておくことが重要です。
また、企業内の全部署で導入を進めるのか、一部の部署で導入するのか、フリーアドレスの適用範囲についても検討が必要です。
たとえば、電話対応の多い部署やデスクトップでの作業が必要な部署は、フリーアドレスには向いているといえません。反対にもともとテレワークを取り入れている部署や電話対応が少ない部署はフリーアドレスの導入に向いているといえます。
ワーカーの意見を取り入れる
部署やチームの働き方を考慮するため、導入の検討段階でワーカーの意見を取り入れることも大切です。
▼ワーカーの意見を聞き出す方法
- チームや部署ごとにフリーアドレス化へのアイデアを出し合う
- ワーカーが欲しいスペースや設備をヒアリングする
- 現在の働き方で直面している課題を洗い出す
意見を収集することで、現在抱えている課題や必要なスペース・設備などが明確化され、具体的なアクションプランが見えてきます。
ワーカーのニーズを考慮したうえでフリーアドレスを導入すれば、失敗例を防ぎつつ、効果的なフリーアドレスの実現が可能です。
デスクやチェアのレイアウト・デザインを工夫する
ワーカーが席を選ぶことに意味を見いだせるように、デスクやチェアのレイアウト・デザインを工夫することも欠かせません。ここでポイントとなるのが“ABW”という考え方です。
ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)とは、業務内容に合わせて、ワーカー自身が効率的に働ける場所を選べるワークスタイルを指します。 |
同じデスク・チェアを並べた空間でのフリーアドレスは、席が固定化しやすく、コミュニケーションの活性化や業務改善につながらないことがあります。フリーアドレスを進めるにあたっては、さまざまな社内活動に適したワークスペースを用意することも重要な要素です。
▼ABWを意識して取り入れたいデスク・チェアの例
- 一人で行う仕事とチームでの仕事の両方に活用できるライブラリーデスク
- グループでの作業に活用できるブース型ソファ
- 黙々と集中して作業できるパネル付きデスク・チェア
- 立ち仕事やちょっとした打合せに活用できるハイカウンター
- 多目的に使える広々としたデスク
デスク・チェアの種類が豊富であれば、その日の業務内容に応じて適切なワークスペースを選べます。また、席を選択することに魅力を感じ、フリーアドレスの効果を発揮しやすくなります。
効果的なフリーアドレスの導入事例
ここまでお伝えしてきたポイントを実際のオフィスに落とし込んだ事例をご紹介します。
株式会社Agoop様
Agoop様は、携帯端末の位置情報データの解析を行う会社です。複数の拠点を一つのオフィスに統合する移転プロジェクトを機に、多様なワーカーの働き方に適したオフィス環境を実現しました。
ワークスペースには、縦長デスクや窓向きのカウンターなど、バリエーションの豊富なオフィス家具を設置。営業エリアと開発エリアをゆるやかにゾーニングし、良好なコミュニケーションを促進しています。
さらに、一角にはハイカウンターやホワイトボードも設置。フロア全体の作業状況に目が届きながらも、業務に応じた座席選びができるようにしています。
株式会社eumo様
eumo様は、教育・投資・プラットフォーム事業を行う会社です。“つながり”をテーマとしたオフィスのワークスペースは、企業の世界観を大切にしながらもレイアウトを自由に変更できるつくりにしています。
ヒノキの床材で、ワーカーが靴を脱いで使用するオフィスというのも特徴です。可動式のテーブルと収納棚を採用しているため、仕事内容や目的に応じてデスクの位置を変更できます。
ACメディカル株式会社様
ACメディカル様は、医薬品の開発・販売支援や臨床研究支援サービスなどを展開する会社です。事業拡大に伴う増員を機にオフィスのワンフロア化、リフレッシュスペースの設置などによって社内のコミュニケーションの活性化を目指しました。
ワークスペースには、島型に配置した座席のほか、ブースで囲われたBOX席やカウンター席も用意。
全体を見渡しながらも、作業内容やプロジェクトのメンバーによって座席を使い分けできるよう工夫しています。ワンフロアで席の移動を面倒に感じさせないつくりの執務エリアにしています。
まとめ
フリーアドレスの導入を成功させるためには、導入によって企業が目指す目的を明確にすること、ワーカーの声を聞くこと、ABWを意識したレイアウトやデザインにすることなどが重要です。
自社の働き方改革を進め、ワーカーにとってよりよいオフィス環境の実現を目指す企業さまは、フリーアドレスを効果的に導入してオフィス環境の改善を目指してみてはいかがでしょうか。