快適なオフィスをつくる5つの条件と設計ポイント
働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークが一気に普及し始めました。テレワークに伴い、オフィスでの勤務時間の減少やオフィス環境に求められる要素も変化しつつあります。
また、テレワークを取り入れる企業が徐々に増えるなか、オフィスは単に仕事を行う場ではなく、ワーカー同士のコミュニケーションやアイデアの創出を促す場としての活用が期待されています。今回はオフィスを快適な空間へ向上させるための設計のポイントについて解説します。
出典:総務省『令和2年版 情報保通信白書』
目次[非表示]
- 1.快適なオフィスの条件
- 1.1.1.オフィス内の動線がスムーズ
- 1.2.2.居心地のよい休憩スペースを確保している
- 1.3.3.温度・湿度・明るさが適正に保たれている
- 1.4.4.多様な働き方に対応している
- 1.5.5.プライバシーが確保されている
- 2.【エリア別】オフィスの快適性を高める設計のポイント
- 2.1.執務スペース
- 2.2.会議スペース
- 2.3.リフレッシュスペース
- 2.4.エントランススペース
- 3.まとめ
快適なオフィスの条件
オフィスを快適な空間にするためには、ABWの考え方を理解することが大切です。
ABWとは、Activity(アクティビティ)・Based(ベースド)・Working(ワーキング)の頭文字を取った言葉です。働く人が働く時間と場所を自由に選択できるワークスタイルを意味します。
仕事をする環境を自分で選択することは、ワーカー一人ひとりの自主性や仕事に対する満足度にもつながります。それでは、ABWを踏まえた快適なオフィスをつくるには、どのような条件があるのでしょうか。
1.オフィス内の動線がスムーズ
オフィスには、デスクやプリンターなどのOA機器、収納棚などさまざまな物があります。それらの配置によっては仕事効率を低下させたり、課題を生み出す原因となったりします。
▼オフィス動線の課題の例
- 利用頻度の高い機器へのアクセスが悪い
- 通路が混雑する
- コミュニケーションが取りづらい
オフィス内にスムーズな動線計画を立てるには、ワーカーが動きやすいOA機器の配置や移動距離が短くなるように工夫することが大切です。
2.居心地のよい休憩スペースを確保している
集中力を高め、質の高い仕事を行うには適度な休憩も必要です。しかし、休憩室が備わっていない、休憩スペースが狭く混雑している場合、思うように休憩できないこともあります。
ワーカーの気分転換を促し、リフレッシュしやすい環境を整えるためには休憩スペースの快適性の向上を図ることが大切です。物理的な広さを確保するだけでなく、精神的にリラックスできるような空間設計を工夫します。
3.温度・湿度・明るさが適正に保たれている
快適性を語るうえで見逃せないのがオフィス内温度や湿度です。
寒すぎたり、暑すぎたりする環境はワーカーにストレスを与え、健康に影響を及ぼすこともあります。また、暗く閉鎖的な空間は、やる気の低下や精神的なストレスを招く可能性もあります。
オフィスの温度・湿度を決して軽視せず、常に適正に保てるよう努め、開放的で明るい空間づくりを意識することが重要です。基本的な空調設備のほか、換気や空気清浄の機能が備わった機器を使用し、オフィス内の新型コロナウイルス感染症対策にもつなげられます。
4.多様な働き方に対応している
従来のオフィスでは、ワーカーごとにデスクが固定されているのが一般的でした。しかし、最近ではオフィスに出社しないテレワークやシェアオフィスといった働き方が広がっています。
座席を固定しないフリーアドレスの導入や作業内容に応じてオフィス内のワークスペースを自由に選択できるようにするなど、一人ひとりが業務内容や働き方に合わせて働く場所を選べるような柔軟な働き方が求められます。
勤務場所の自由な選択はテレワークの推進につながるだけでなく、稼働率が低下したオフィスの座席スペースの削減にも有効です。
5.プライバシーが確保されている
業務内容によっては周囲の視線や声が気になる場合があります。とくに、集中力が必要な業務には、プライバシーが確保されているデスク配置が必要です。
そういった問題には、開放的な執務スペースとは別に個室や集中ブースを設置する方法があります。コミュニケーションの場とは区別して設計することも大切です。
【エリア別】オフィスの快適性を高める設計のポイント
オフィスの快適性を高めるには、エリアごとに設計を見直すことから始めます。各スペースの使用目的に合わせて、デスク配置や照明の明るさ、設置する家具などを決めましょう。
執務スペース
執務スペースではワーカーがスムーズに動けるよう、デスクから使用するOA機器までの動線を考えるのがポイントです。混雑を避けるために、通路には十分な広さを確保する必要があります。
また、コピー機やシュレッダーなど、よく利用するOA機器にアクセスしやすい通路を設けるといった配慮も大切です。デスクの配置はそれぞれの特徴を加味したうえで、企業の勤務形態やワーカー・従業員数に合わせて選択しましょう。
▼デスクの配置例
- 島型
部署ごとにデスクを集めて島をつくるレイアウト。
チームで仕事をすることが多い業種に向いています。
- 並列式
デスクをすべて同じ方向に配置するレイアウト。
受付や来客の多い業種でよく見られます。
- 背面式
ワーカー同士が背中合わせに座り、正面をパーティションで仕切るレイアウト。
集中して作業を行う業種、クリエイティブ系の業種に向いています。
- ブース型
デスクごとに仕切りを設け、個人の作業空間を確保するレイアウト。
プログラマーやクリエイターのように、個人で仕事をする業種に向いています。
- フリーアドレス型
個人の座席を固定しないレイアウト。
営業が多いオフィスやクリエイティブ系の業種などに取り入れられています。
オフィスのレイアウトを業種や働き方に合わせて設計することで、快適性が高まるとともに、生産性の向上につながります。
また、コロナ禍では身体的な距離を確保することも重要です。デスク間の距離に余裕を持たせる、パーティションを設置する、対角に席を配置するといった対策も取り入れましょう。
会議スペース
会議スペースは、会議が行われる頻度や利用人数を考慮して設計しましょう。各会議スペースにAV機器を用意するほか、利用目的に応じた空間デザインも重要です。
▼会議スペースの空間デザイン例
- コーポレートカラーやデザインを取り入れる
- オープンスペースで部署の垣根を超えた交流を図る
- おしゃれな家具・空間デザインでモチベーションの向上を図る
会議室は、個人で業務を進める執務室とは異なる空間を意識して設計を行うことがポイントです。商談や会議などで社外の人が訪れる場合は、企業のコンセプトが感じられる設計に工夫することで自社のイメージアップにもつながります。
また、執務スペース内に壁をなくした会議スペースを設置するのも一つの方法です。予約不要で必要なときにすぐに打ち合わせできる環境を整えられます。
リフレッシュスペース
リフレッシュスペースには、気分転換やストレス緩和を促せる空間設計が求められます。
テレワークを導入している企業においても出社が必要なワーカーがいます。なかにはローテーションで在宅勤務とオフィス勤務を交互に取り入れている企業もあるのではないでしょうか。
出社時にほっと一息リラックスできる空間があれば、テレワークや不規則な働き方によるストレスを緩和できます。ワーカー・従業員数に応じた広さを確保するとともに、設置する家具や照明にもこだわりましょう。
▼リフレッシュスペースの空間設計例
- カフェのように過ごせるテーブルやソファなどを取り入れる
- 観葉植物を取り入れて癒やしある空間をつくる
- リラックスできる照明やBGMを取り入れる
- ワーカーが利用できるドリンク・軽食サービスを導入する
- テラスや庭園を取り入れる
ワーカーのためを思ったオフィス設計は、ワーカーの満足度向上やブランティングにもつながります。
エントランススペース
エントランススペースは、企業の顔となる場所といっても過言ではありません。清潔感のあるデザインを意識することはもちろん、企業イメージを反映した空間設計がポイントです。
▼エントランススペースの空間設計例
- コーポレートカラーやロゴを取り入れる
- ソファや電話機を設置する
- 閉鎖的にならないよう、窓や観葉植物を意識して取り入れる
- 感染対策の取り組みについて掲示する
- 消毒液を設置する
来訪者が待ち時間の負担を軽減して快適に過ごせるよう、ソファやテーブルを設置するとよいでしょう。
まとめ
ABWの考えを取り入れたオフィスは、快適性も高く、ワーカーのモチベーションや生産性の向上につながります。オフィスの空間設計を考える際は、デスクの配置や通路の幅を確保するといった動線のことだけでなく、照明やインテリアを含めた空間デザインにもこだわりましょう。
業務内容に応じたワークスペースの設置やコミュニケーション促進を狙ったスペースの設置などを行い、多様な働き方に対応した快適なオフィス設計を実現してみてはいかがでしょうか。