オフィスをフリーアドレス化するメリット・デメリット
働き方改革の一環としてオフィスにフリーアドレスを導入している企業、または、今後導入を検討している企業は多いのではないでしょうか。
しかし、「固定席をなくす」こと以外に、フリーアドレス導入の目的や得られる効果をよく知らないという方も少なくないはずです。
そこでこの記事では、オフィスにフリーアドレスを導入するメリット・デメリット、導入するときのポイントなどを解説します。
目次[非表示]
- 1.フリーアドレスとは
- 2.フリーアドレスの目的
- 3.フリーアドレスのメリット
- 3.1.オフィスのコストを削減できる
- 3.2.社内コミュニケーションを活性化できる
- 3.3.多様な働き方を推進できる
- 3.4.整理整頓しやすく、オフィス環境を美化できる
- 3.5.プロジェクトごとにチームを編成できる
- 4.フリーアドレスのデメリット
- 4.1.マネジメント効率・集団意識が低下しやすい
- 4.2.集中を妨げる場合がある
- 4.3.環境整備におけるコストがかかる
- 4.4.社員の名前や顔を憶えづらい
- 5.フリーアドレスを導入する際のポイント
- 5.1.業務ルールを定める
- 5.2.集中スペースを用意する
- 5.3.ITツールやシステムを導入する
- 5.4.社内で交流できる機会を設ける
- 6.まとめ
フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、ワーカーが個々の座席を持たず、自由に座席を選択できるオフィススタイルのことをいいます。
従来のオフィスでは、ワーカーの一人ひとりに座席があることが一般的でした。しかし、営業の外回りのように仕事柄オフィスにいる時間が少ないワーカーもいます。さらに、テレワークやシェアオフィスの活用が増えたことで、オフィスに出社せずに仕事をするという働き方が広がっています。
固定席の利用頻度やオフィスで業務を行うワーカーの数が少なくなったことから、固定席をなくして座席を自由にするフリーアドレスというオフィススタイルが注目されています。
フリーアドレスの目的
フリーアドレスには、デスクスペースを削減した面積効率の向上やワーカー同士のコミュニケーションの活性化、オフィスの縮小によるコスト削減などさまざまな目的があります。
ただし、業種や働き方によってはフリーアドレスが適していない場合もあります。メリットやデメリットを把握して、自社に合っているかを見極めたうえで導入することが重要です。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレスの導入には、コスト面やワーカー同士のコミュニケーションの促進など、さまざまなメリットが挙げられます。
オフィスのコストを削減できる
ワーカー全員分のデスクを用意しなくて済むため、省スペース化により面積コストが抑えられます。オフィスを維持するための経費の削減や賃料の削減を図れるといったこともメリットの一つです。
社内コミュニケーションを活性化できる
ワーカーが自由に座席を選べるため、普段はかかわらない部署の人との交流が生まれやすいというメリットがあります。
組織の壁がなくなることで、社内コミュニケーションを活性化できます。スムーズな情報共有やワーカー同士の何気ない会話などから新たなアイデアや施策が生まれることも期待できます。
多様な働き方を推進できる
フリーアドレスは席を自由に選べるだけでなく、固定のオフィスに縛られることがありません。
営業で外回りに出向いた後、サテライトオフィスやレンタルオフィスで作業する、といった働き方もできるため、業務内容や状況に応じてワーカーが働く場所を自由に選べるようになります。
整理整頓しやすく、オフィス環境を美化できる
フリーアドレスは、複数のワーカーでデスクを共有するため、退勤時にデスクを整理する必要があります。そのため、私物や書類を置いたまま、デスクが散らかってしまうことを防げるメリットがあります。
ワーカーに固定のデスクを提供する代わりに、共有のロッカーや収納棚を設けることで、各自の荷物を整理整頓しやすくなり、オフィス環境をきれいに維持できるようになります。
プロジェクトごとにチームを編成できる
固定席の場合は、一つのプロジェクトにかかわるワーカー同士が集まって作業を行うことや意見交換をすることが難しい場合もあります。その点、フリーアドレスでは、一つの場所に固まって業務に当たることができます。
プロジェクトごとにメンバー同士でスケジュールを合わせ一箇所に集まれば、より効率的に意思疎通を図れます。これにより、作業効率の向上やチームワークの強化も期待できます。
フリーアドレスのデメリット
フリーアドレスの導入を検討するうえでは、メリットだけでなく、予想されるデメリットについても理解しておくことが大切です。
マネジメント効率・集団意識が低下しやすい
ワーカーが自由に席を決めて働けるため、上司や管理者がマネジメントしづらいという注意点があります。さらに、決まったワーカー同士が顔を合わせる機会が少なくなることで、組織としての集団意識が薄れやすくなるデメリットもあります。
帰属意識の低下は、モチベーション低下や人間関係にも影響を与える場合があります。フリーアドレスを導入する際は、ワーカーのモチベーションを維持できるような仕組みづくりが必要です。
集中を妨げる場合がある
フリーアドレスでは、自分の近くに座るワーカーが毎日変わることも珍しくありません。これにより、周囲の会話や動作が気になり、業務に集中しづらくなるといった注意点があります。
ワーカーによっては、働く環境が変化することでストレスを感じることもあります。業務内容に応じて1人で集中できるスペースの設置やパーティション付きのデスクを配置するといった対策を取ることが重要です。
環境整備におけるコストがかかる
フリーアドレスでは、情報共有のためのシステム構築が不可欠です。
座席にかかわらず、自社サーバーにアクセスできるクラウド環境やワーカーと連絡を取れるコミュニケーションツールの導入が必要です。これらのツールを導入する際にコストや時間がかかるといったデメリットがあります。
社員の名前や顔を憶えづらい
毎日のように座席が変わるため、ワーカー・従業員数が多い企業では、顔や名前を憶えづらいというデメリットがあります。
従来の座席表が利用できなくなるほか、初めてかかわるワーカーと連絡を取る場合は、コミュニケーションツールで場所を特定するといったことも必要です。
フリーアドレスを導入する際のポイント
フリーアドレスにはさまざまなメリットがある一方で、組織力の希薄化やマネジメント機能の低下などのデメリットもあります。デメリットを解消するために、導入時のポイントを押さえておきましょう。
業務ルールを定める
ワーカー・従業員間での情報共有をスムーズに行うために、フリーアドレスの利用ルールやマネジメント方法を明確化しておきましょう。
▼業務ルールの例
- 情報共有ツールを活用する
- 業務上の連絡事項や連絡のタイミングを決める
- 座席を固定化しないルールを決める(毎日同じ席はNGなど)
- チームで座りたいときや個別で座りたいときなどにはブロックを分ける
集中スペースを用意する
フリーアドレスでは、1人で集中して業務を行えるスペースを用意することが重要です。
オープン座席のみのフリーアドレスでは、周囲の目線や雑音が気になることもあります。仕切り付きのテーブルや窓向きデスクを用意するなど集中しやすい環境を整備しましょう。
たとえば、ロングデスクだけでなく、丸テーブルや囲みソファなど種類の異なるデスクを用意しておくことで、業務内容に合わせて効率的に作業できるワークスペースを選べるようになります。
ITツールやシステムを導入する
上司や管理者によるマネジメント機能の低下を防ぐために、情報共有ができるITツールの導入が有効です。
▼活用できるITツール例
- 社内の情報を一元管理・共有できるクラウド型システム
- 気軽にメッセージやWeb会議ができるコミュニケーションツール
- ワーカーがどこにいるのかを把握できる在席管理ツール
ツールの使用でコミュニケーションが円滑になることで、適切なフォローやマネジメントができます。ワーカーの業務内容や進捗状況を把握できるような体制づくりがポイントです。
社内で交流できる機会を設ける
集団意識の希薄化を防ぐために、定期的に社内で集まる機会を設けるのも有効です。
▼社内交流の例
- Webでの近況報告会議
- 月に一度の社内昼食会
コロナ禍では、一つの場所に大勢が集まって交流することが難しい場合もあります。また、対面でのコミュニケーションが少なくなることで不安やストレスを感じるワーカーもいます。こうした場合にはオンラインで交流できるツールの活用がおすすめです。
ワーカー同士が定期的に顔を合わせることで、社内のつながりが維持できます。会社の一員という帰属意識を高められ、モチベーションの向上にもつながります。
まとめ
フリーアドレスは執務スペースに固定席を設けずに、ワーカーの一人ひとりが好きな場所で業務を行える働き方です。導入により、オフィスの省スペース化やコスト削減、他部署とのコミュニケーションの活性化など、さまざまなメリットが期待できます。
一方で、上司や管理者の目が行き届きにくく、マネジメントしづらいという課題もあります。課題の解決には、自社でルールを明確化したり、集中スペースやITツールを導入したりといった工夫を行いましょう。
「オフィスの活用頻度が減っている」「柔軟な働き方を実現したい」という企業は、デメリットの解決策を検討したうえで、フリーアドレスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。